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しん・すいこでん
新・水滸伝
吉川 英治
「日本」講談社、1958(昭和33)年1月号~1961(昭和36)年12月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 684,899 字 · 1374 页
さ、そんな土性骨か、食わせ者か、試してやるから受けてみろ」
跳び退いたのは、構えを作るためだった。いきなり彼の棒は、右手と一本のものとなって、ぶんっと、王進の首のつけ根へ落ちてきた。
どう取ったのか、王進は彼の棒の一端を、左の腋の下にしっかと挟み込んで、
「おあるじ。よろしいですか」
と、太公の顔を見て笑った。
「よろしいとも。うんと、こらしてくだされい。鳥なき里の蝙蝠とかで、自分以上な者はないと、何ともかとも、手のつけられん小伜じゃ。ひとつその増上慢の鼻を、折ッぴしょッてくだされば、いっそ、当人には倖せというもんじゃろ」
「承知しました。親御のお頼みとあれば」
聞くと、史進は、
「なにをっ」
と、全身九ツの龍に、ぱっと血を与えたような色を、みなぎらせた。
が、もとより田舎仕込みの武技だ。たとえこの若者の肉体と血気に、どんな精根があろうと、王進の眼には、児戯にひとしいものだったのは、いうまでもない。
一振一撥、また、眼もとまらぬ一撃一突、すべて見事な肉体の空演舞だった。史進は、声を嗄らして、その喉から臓腑を吐かんとするほどに身も疲れてしまった。それでも、まいったとはいわなかったが、あ――と感じるまに、大空が自分の脚の上に見えた。