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しん・すいこでん
新・水滸伝
吉川 英治
「日本」講談社、1958(昭和33)年1月号~1961(昭和36)年12月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 684,899 字 · 1374 页
そこで即日、大赦の令を発せられ、施薬や施粥の小屋を辻々におき、なおまた、かくは、臣洪信を遠くにおつかわしあって、当山の虚靖天師に、病魔調伏の祈りを、おん頼みあった次第である。その儀は、すでに心得おろうがな」
「うけたまわっておりまする」
「勅願の詔書は、すなわち、これなる錦のふくろに入れ、臣洪信の胸にかけて奉じてまいった。――さっそく、龍虎山の大仙、虚靖天師にお会いして、おわたし申しあげねばならんが、天師はいずこにおらるるか」
「大仙は、ここにはおいでございませぬ。ここの俗塵すら嫌って、これよりさらに山ふかく、龍虎山のいただきも尽きるところに、一宇の草院を結び、つねに仙道ご修行のほか、他念もなくおわせられます」
「では、そこまで登らねば、天師にお会いできぬのか」
「それも、お使者ご一名のみ。……斎戒沐浴をとげた上ならでは」
「はて、不便なことだなあ。勅命なのに」
「いかに、ご勅使たりと、霊山の法規はまげられませぬ。まこと、仁宗皇帝が、万民の苦患を救わんため、万民に代って、大仙のご祈祷をおたのみまいらすなれば、ご代参の殿が、それしきの精進をつとめるなどは、何ほどのことでもありますまい」