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しん・すいこでん

新・水滸伝

吉川 英治

「日本」講談社、1958(昭和33)年1月号~1961(昭和36)年12月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 684,899 字 · 1374 页

青空文庫

ほどなく、二人はそこの酒館を出ていた。

路次から路次を曲がりくねった貧民街の一軒だった。ちょうど、※(「軍+おおざと」、第4水準2-90-23)哥は空になった果物籠を肩に掛けて、わが家のかどに帰って来たところ。ヘンなおじさんが二人、佇んでいたので、

「やい、なんだッて、ひとの家を覗いてるんだよ。オヤ、九叔の親方さんだな」

「おお坊、いいとこへ帰って来た。こちら様を知ってるか。都頭の武松さんだぞ」

「ヘエ、あの虎退治のかい」

「折入って、おめえに訊きたいことがあると仰ッしゃるんだ。いい子だから、正直に何でも知ってることをお話ししろよ」

「あっ、あのことだな」

「あのことって?」

「うんにゃ、おらは何も知らねえ。うちの父ッさんに叱られたよ、子供のくせに、大人の世界のことに出洒張るな、ヘタするとお白洲へ曳かれるぞッて」

「そんなことはあるもんか。そうそう坊の父ッさんは長の病で、おめえの稼ぎを杖とも柱ともしてるンだってな。都頭さん、この小僧はとても親孝行なんですよ」

「そうか、じゃあその孝行にご褒美をやろう。小僧、手を出しな」

「やっ。これや銀子で五両……。どうしよう、親方さん」