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しん・すいこでん
新・水滸伝
吉川 英治
「日本」講談社、1958(昭和33)年1月号~1961(昭和36)年12月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 684,899 字 · 1374 页
。生半可、彼が世上慾に目をひらいて、先祖代々からの庄屋づとめや百姓仕事を嫌いだしたら、かえって、わしの仕込んだ道も、史家にとってはあだになる」
そう思いついたので、ある日のこと。
「長々お世話に相成ったが」――と、彼は急に、身の都合を言いたてて、あるじの太公へ、暇乞いを告げた。
「母が申すには、脚腰の達者なうち、どうしても先にこころざした延安府へ行って暮したいと望んでやみません。ご子息へはもう不肖の武芸はのこりなくご教授申しあげた。……どうぞご一家にはこの先ともごきげんよく」
ふいの別れを述べられて、太公はおどろき、子の史進も悲しんだ。けれど、いかに引きとめても無駄だと知ると、さて惜別の宴には、銀子や餞別の品々を盛って、王進母子に捧げ、かつ出立の日となると、馬や供人をも添えて、関西路へ向う隣県まで、ねんごろに送らせた。
――だが、そのあと。
残された史進は、ぽかんと虚脱に落ちてしまった。たまらない寂寥が彼をして毎日酒にひたらせて行った。いや、さらに大きな空虚は重ねて彼の一身を襲った。その秋、父の太公が、とつぜん病死したのである。
これも手つだってか、彼の放縦は自暴の相を帯びだした。