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しん・すいこでん

新・水滸伝

吉川 英治

「日本」講談社、1958(昭和33)年1月号~1961(昭和36)年12月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 684,899 字 · 1374 页

青空文庫

すると、頭の上でガサゴソしていた無数の人影の気配が、いちどに笑って、

「まるで鯰が酒を食らったようだ」

「もう足掻きはつくめえ。足掻いたところで逃げ道はねえしよ」

と、言い囃している風だった。

あとで思えば、桟橋を渡って東へ行くべき本道に偽装垣が作られていたため、酔眼朦朧、いつも村人が猪を追い込む猪落し穴の横道へ誘い込まれていたものらしい。

口笛がつんざく。松明が集まって来る。

やがて無慮七、八十人もの荘丁や百姓たちが、思い思いな得物を手に、武行者の体を、猪捕り手だてで押っ取り囲んだ。いかんせん、醒めたとはいえ、泥酔の果てである。井桁に結んだ丸太担架に五体をくくしつけられた武行者の体は、かつて彼自身が景陽岡でしとめた大虎そッくりな恰好にされ、わッしょわッしょと村の地主屋敷の門内へと担ぎ込まれて行ったのだった。

「兄さん、首尾よく捕まえてくれたそうですね、いや私は面目ないが」

地主屋敷の門へ、いま、こう言いながら帰って来たのは、最前、武行者に谷川崖へ投げ込まれた例の白面の少年郎だった。

対するは、その兄か。

苦みばしった面ざしの、これも眉目秀でた大男で、