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しん・すいこでん

新・水滸伝

吉川 英治

「日本」講談社、1958(昭和33)年1月号~1961(昭和36)年12月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 684,899 字 · 1374 页

青空文庫

「あっ、ご婦人は」

「そうれごらんな。よくも山寨でさんざんわたしを脅したね。ほかに三名の頭目もいたが、たしかおまえが一番敬われていたっけね。大親分はお前なんだろ」

「とんでもない。奥方! あなたこそ、何かお忘れではありませんか」

「なにをさ! 馴々しいことをお言いでない」

「賊首の三名を説いて、あなたを救って上げた覚えはあるが、大親分などとは迷惑千万です。恩人の私へ、なぜ悪名を押しつけねばお気がすまないのでしょうか」

「まあ、しらじらしくいうわね! あなた、とてもこんな人非人、一ト筋縄では白状しそうもありませんわ」

「いや、吐かせてやる。者ども、こいつを打ちのめせ」

と、あたりの部下に命をくだした時である。門の衛兵が馳けて来て、

「ただ今、花長官の使いがまいって、ご返辞をお待ちしています」

と、一書を彼の手に捧げた。

「……ふむ」と、ひとまず鼻息をひそませて、彼が読みくだしてみると。

昨夜お手にかかって貴邸に捕われたと聞く劉丈は、わが家の身寄りにて、最近、済州から来た者です。田舎者とて何か尊威を犯したかもしれませんが、平常のよしみ、偏にお目こぼしにあずかりたく、いずれ拝面、万謝申しあげますが、懇願までを。