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しん・すいこでん

新・水滸伝

吉川 英治

「日本」講談社、1958(昭和33)年1月号~1961(昭和36)年12月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 684,899 字 · 1374 页

青空文庫

銅鑼の打ち方もただの戦陣拍子でなく、まるで人を揶揄するような囃し方としか聞えない。

「下だ、下だ! もうすこし下の東寄りだ」

上からの攻勢は戦法の利と、無造作に雪崩かけたのが、またぞろ重大な過誤とはなった。途中、山肌の剥げている片側道が削られていたのである。土砂もろとも、人馬は谷底へころげ落ちた。「止まれッ、止まれ!」と叫んでも後からの勢いに、瞬時、歯止めの効かない車覆りの如き惨状を見てしまった。

「ひとまず退けい。道をあらためて、こんどこそは潰滅してやる!」

短気で鳴っている秦明も、いまはただ呶号に呶号するばかりだった。怪我人を谷から拾い集めて一たん野営の場へひきあげた。そして休息ついでに早目な晩の兵站に夕煙を揚げはじめた。

するとつい今しがた降りて来たばかりな山中で、またも前にもまさる鬨の声や金鼓のひびきだ。自身はヘトヘトだったので、一隊を割いてまず前哨戦にやってみると、これがなかなか帰って来ない。

しかも、銅鑼の乱打はなお嘲るごとくつづいていたから、たまりかねたか、彼は再び馬上となって全軍へ号令した。

「兵糧は賊徒を踏みつぶしたあとでゆっくり食おう。