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しん・すいこでん

新・水滸伝

吉川 英治

「日本」講談社、1958(昭和33)年1月号~1961(昭和36)年12月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 684,899 字 · 1374 页

青空文庫

懺悔とともに、張が言った。

すると、李俊をはじめ、みな吹き出して、

「おや、張横がいやに、しおらしいことをいい出したぜ。そんならこれから村の寺小屋へ馳けつけて、寺小屋のお師匠さんに、さっそく一本書いてもらわなくちゃならねえな」

と交ぜかえした。

こんな冗談も出るほどすぐうち解けていたのである。ところへ、彼方の岸にまた松明の点々が見え出した。宋江よりは端公ふたりがすぐあわて出した。

「あっ、さっきの奴らだ、まだ頑張ってる!」

「騒ぎなさんな」と、李俊は立って、唇に指を咥え、水谺するどく口笛をふいた。すると岸の松明は遠くへ去った、と見えたのは洲つづきの葦の間を廻ってこれへ来たのであった。

李俊は、それへ来た一群をみるとすぐ叫んだ。

「穆さんのご兄弟、おれたちが日頃よくはなしていた山東の及時雨、宋押司さんがここに来ていらっしゃる! さあみんな、ごあいさつだ、ごあいさつだ」

「なんだって?」

穆とよばれたのは、宵に泊りかけた、地主の旧家、穆家の兄弟か。

「おう」

宋江もいまは微笑で会釈した。

まごうなく、その日の昼、掲陽鎮の辻で、香具師の浪人を脅し、またさんざん自分のあとを追ッていたあの壮漢だ。