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しん・すいこでん
新・水滸伝
吉川 英治
「日本」講談社、1958(昭和33)年1月号~1961(昭和36)年12月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 684,899 字 · 1374 页
根はみな「やくざ」も仏心の子か。 黒旋風の李逵お目見得のこと
穆弘、穆春の兄弟は、
「ええもう、ごしんぱいなさいますな。ひきうけますとも」
と快諾し、また張横は、いつのまにか一通の手紙を用意し、宋江に渡して告げた。
「江州へおいでになりましたら、あっしの弟の張順ッて男を、どうぞお忘れくださいますな」
何やかや、終日は賑やかな親睦の宴に暮れ、また次の日、さらに翌日も、人々は宋江を掲陽鎮の城内へ連れ出して、名所旧蹟、辻々の盛り場、興行物、ありったけな風物を見せてあるいた。
宋江はもう恐縮しぬいて、一同へこう告げた。
「なんとも、おこころざし、生涯忘れえないでしょう。とはいえ、私は流刑の身、こう甘えていてはお上にも畏れあり、あしたは是非是非お別れ申さねばなりません」
さて。その前夜には、一同揃って、また惜別の宴だった。席上とくに宋江が心ひかれたのは、穆家の美しい末娘が琵琶をかかえて、この地方の名所、潯陽江のゆかりに因み、かの中唐の詩人白楽天がそこの司馬に左遷されたときに作ったという“琵琶行”を聴かせてくれたことである。琵琶行の序詩には、その由来が、こう叙べられている。
“――中唐の元和十年、私は九江郡の司馬に左遷され、秋の一夜、客を埠頭に見送った。