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しん・すいこでん

新・水滸伝

吉川 英治

「日本」講談社、1958(昭和33)年1月号~1961(昭和36)年12月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 684,899 字 · 1374 页

青空文庫

独り酌む酒は、沈酔になりやすい。かつは二十日以上も乾いていた腸だった。彼はどうしたのかはらはらと涙を垂れた。

「自分も三十はとうにこえたのに、一個の名も成さず、家の業をたすけるでもなく、親からいただいたこの体には刺青されて遠流の身だ。ああ、残念な。ああ、腑がいないことだ。……すみません、父上」

惨として独り注いでは飲み、注いでは飲み、やがてその大酔を自嘲に交ぜて、思わずも一詩を胸に醸していた。

また、ふと見ればかたわらの白壁には、あまたの遊子酔客が、それぞれここに興を書きのこした題詠が見える。彼もまたつい、備え付けの筆をとって、次の章句を書きとどめた。――もし他日、歳月たって、再びここに遊ぶ日の想い出にもなろうかと。

少年、はやくに、経史を学び

長じて、心に謀をえがくも

爪牙、むなしく

迷いの虎に似る

現し身は、罪のいれずみ

いま江州の囚地にあり

もし年ありて、再び来らば

このうらみ、この嘆

潯陽の水も紅となって泣かん

こう一気に書いて来て、宋江はその溌墨の匂いとともに、心気すこぶる爽快になった。無性に、何かうれしくなり、つづいてその後に。

心は山東に、身は呉にあり