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しん・すいこでん

新・水滸伝

吉川 英治

「日本」講談社、1958(昭和33)年1月号~1961(昭和36)年12月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 684,899 字 · 1374 页

青空文庫

「それだけでは、てまえにも判じかねます。おそらく何か星の天数六六をいったのではないかと思われますが」

そこへ、蔵帳官が牢城の簿を持って来て。

「これではございませんか」

と、点簿の名に、朱紙を貼って差出した。

見ると「五月新入り囚徒、城県産、宋江」とある。折も折、宋朝廷の天文太史院は、都下の謡言や北斗を占案って、諸州へ乱のきざしを警報してきたところではあり、この事実なので、奉行蔡九は、たちどころに決断をくだし、

「潯陽楼の壁に、不敵な叛詩をしるした犯人、宋江を即刻からめ捕れ、一ときたりとも時をうつすな」

と、すなわち江州牢城の両院長、戴宗へその命をくだした。

宋江は何も知らずに、その朝、籠の小鳥に餌をやっていた。病中いらい、窓辺の友としていた鳥籠の黄鳥だった。

「宋君! 小鳥どころじゃないぞ」

後ろの扉ぐちに、こう息ぜわしい声を聞き、ふと振向いて。

「おっ。戴院長ではありませんか。そのお顔いろは、どうしたことだ?」

「いやあなたこそ、とんだことをしてくれた。どうにもならん」

「何がです」

「潯陽楼の壁に、あなたは叛詩を書いたではありませんか。自分もいま、見とどけて来た。