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しん・すいこでん
新・水滸伝
吉川 英治
「日本」講談社、1958(昭和33)年1月号~1961(昭和36)年12月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 684,899 字 · 1374 页
ぎょろと、内の客を見たが、軒につないである駒のそばへ戻って行き、その不思議な鞍皮の神仏像の絵やら、また戴宗のふうていなどを、しきりに眺めくらべていた。
「もし、お客さんえ」
「おう、ご亭主か」
「どちらから来なすったのかね。道者でもなし、武者でもなし、どうも変ったお身なりだが」
「江州から来たのさ。これから開封東京へ行く途中だ」
「へえ、江州のお方ですか。……じゃあ、もしやあなたは、神行法の道術をつかう戴院長さんじゃありませんか」
「えっ、どうしてわかった?」
「いつも、あっし達の仲間の呉用先生から、天下にただ一人のこんな男が江州にいるといって、神行法の不思議をいつも伺っておりましたんで」
「ふウむ、では貴公は、居酒屋の亭主にあらずして、そも何者だ」
「あなたが呉用先生のお友達の戴宗さんなら、何もおかくしする必要はありません。じつを申し上げます。ここは梁山泊と一水をへだてた江の茶店で、てまえはここに変装して、いつも江の口を見張っている梁山泊の男の一人、旱地忽律の朱貴という者でございます」
「や、や。では梁山泊とは、このあたりか。そして呉用学人は、いまもおいでか」
「おりますとも、大寨の軍師さまで、まいど江州の噂のたびには、きまって、あなたのお名が出る。