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しん・すいこでん

新・水滸伝

吉川 英治

「日本」講談社、1958(昭和33)年1月号~1961(昭和36)年12月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 684,899 字 · 1374 页

青空文庫

――その雪のおん膚、美妙な薫り。また纒い給う銀紗のおん衣から、藍田の珠の帯やら白玉のかざりにいたるまで、光燿そのものの中にあるおすがただった。

「星主には、おつつが無うて」

と、女神のきみは、あくまで、宋江を初めてみる者とはしていず、お久しぶりゆえ、と祝いで、すぐ侍女に酒を命じた。宋江は酌がるるままに三献ほどいただいた。女神はまた、

「おさかなに、その棗を」

と、仙界の棗の実などすすめられる。宋江はそれも食べ、核子は捨てる所がないので、掌のなかに握っていた。

口中は麝香をふくんだようである。ほのぼのと、身のうちはかろく、

「身は、蝶になって、花のあいだに在るようなここちです。思わず過ごしました。もういただけませぬ」

と、瑠璃の杯を侍女へ返した。

「あまりおすすめしても……」

と、女神は黒曜石のような眸を侍女へやって、

「では、天書の三巻を、これへ」

と、いいつけ、すなわち、宋江への贈り物とした。

それは黄紗にくるまれた三巻の書で、たてよこ五寸、厚さ三寸。――女神はそれを彼へさずけてから告げた。

「星主。どうぞ天に代って天書の道を人の世に行ってくだされませ。あなたのほかに、その人はありませぬ。