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しん・すいこでん
新・水滸伝
吉川 英治
「日本」講談社、1958(昭和33)年1月号~1961(昭和36)年12月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 684,899 字 · 1374 页
「……そうだ、童女も仙童にちがいない」
心の奥で思いながら、宋江は楼台を上ってさらに深い所の殿前にぬかずいていた。どこやらに聞える仙楽も喨々と世の常ではない。朱の柱に彫られてある龍鳳もともに嘯くかとあやしまれ、やがて珠の簾のうちに、薫々たる神気がうごいて、
「星主、お久しぶりでした。ここへおいでの上は、おへだてには及びませぬ。どうぞこなたへ」
きれいな声が、さも親しげに呼びかけて、そこの簾をさらさらと高くかかげさせた。
宋江は身をすくませて、一そう懼れた。
「これは下界の、はしたなき男にすぎませぬ。なんでかような神界へ、まぎれ参ったものでしょうか。どうぞ、ご憐愍をもって、お帰し下さいますように」
「ホ、ホ、ホ、ホ」
女神は玉をまろばすようにただ笑った。そして四人の仙童に命じ、たって宋江に御簾内の席をすすめた。錦繍の椅子であった。
やっと、ややおちついて四壁をみると、龍燈、鳳燭の光は、碧と金色を映え交わし、二列となっている仙童女は、旌、香瓶、笏、供華などをささげていた。
そして七宝の玉座のお方こそ女神のきみか。おん鬘に高々と、飛ぶ鳳凰、九ツの龍、七彩の珠などちりばめた金冠を載せ、天然無双の眉目のおんほほ笑みを、まばゆいばかりに、こぼしておられる。