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しん・すいこでん

新・水滸伝

吉川 英治

「日本」講談社、1958(昭和33)年1月号~1961(昭和36)年12月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 684,899 字 · 1374 页

青空文庫

「ほんとけ?」

「ほんとだとも。そこで、おっ母あにも、こんどこそ、そばにいて一生安楽にしてやれよう。さ、おれの背なかへ負ンぶしなせえ。どこか本街道まで出たら、車を一丁買っておっ母あを載せ、おらが自分で押して行く」

「あれま、そんなに急なのかえ。でも、われの兄がもどってから、とっくり話し合わざ、悪かろうに」

「兄きか。ま、兄きには途中で手紙を出すからそれでいいやな。何しろこっちは急ぐ体だ」

ところへちょうど、外から、兄の李達が帰って来た。李達は李逵とちがって、根ッからの正直者。十年このかた、音信不通の弟だが、江州奉行所からはこの原籍地へ“お尋ね者”の手が廻っているし、近ごろ梁山泊の仲間へ入ったという風聞もとうに聞いて知っていた。

「なんじゃと? 野郎がおふくろを連れに帰ってきたって。とんでもねえこったわ。何で極道野郎にそんな殊勝な料簡が」

「まあ兄さん、極道極道と頭ごなしに言いなさるが、おれだって人間の子だ。親を思い出すことだってあらあな」

「いかねえ、いかねえ。餓鬼の頃からおふくろ泣かせのわれが、急に生れ変ったような親思いになるものか」

「嘘だと思うなら兄さん、おめえもいっそ一緒に梁山泊へ行って、おらやおふくろとともに、山で暮しなすったらどんなものだね」