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しん・すいこでん

新・水滸伝

吉川 英治

「日本」講談社、1958(昭和33)年1月号~1961(昭和36)年12月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 684,899 字 · 1374 页

青空文庫

「この悪玉め。この兄までを、悪党仲間へ引き込むつもりでいるのか。おお、お尋ね者を届け出なかったら、後日、村の衆までみんな罪に問われよう。たとえ弟野郎でも、このままにはしておけぬ。おふくろっ、李逵を逃がしなさんな」

いうやいな、兄の李達は、外へ走り出して行った。日頃、雇われている地主屋敷へわけを告げて、荘家の若者大勢を引きつれ、再び、わが家へ引返して来たのであった。

ところが、すでに老母の姿も李逵の影も家には見えない。そして銀子五十両が、詫びるように、仏壇においてあった。これには李達も心を打たれ、さては弟もほんとに前非を悔いて来たものとみえる。このぶんでは老母を托しても心配あるまい。――そう思い直したとみえて、

「みなさん、せっかくお助太刀を願いましたが、弟野郎は、逸早く風を食らって、ごらんのように、もうここにおりません。なにしろ素迅い奴ですから、きっと、他県へ高飛びしてしまったんでしょう。いまいましいが、今夜のところは、ひとまずおひき取りなすって」

と、一同へ詫び、一同もまたぜひなく、やがてぞろぞろ帰ってしまった。

――げにや、一方の李逵は、その跳ぶこと、まさに飛獣のようだった。