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しん・すいこでん
新・水滸伝
吉川 英治
「日本」講談社、1958(昭和33)年1月号~1961(昭和36)年12月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 684,899 字 · 1374 页
「そうですか。どうぞご遠慮なく。わたくしが報恩寺の住持如海でございます」
「申しおくれました」と、石秀はそれへ来て――
「金陵生れで、またの名、※命三郎というがさつ者でございます。どうぞよろしく」
「ではお時間もせまりますから、外に待たせてある衆僧をひきつれ、改めて、ご法莚へ参じ直すといたしましょう」
如海はいちどおもてへ立ち去った。
門外にはおくれて来た法要坊主が大勢時刻を待っていたのである。――ひとしきりは何の支度か、饒舌の囀りがただガヤガヤとかしましい。また何ともいえずなまぐさい。
古人も言っている。
「暴ナラズバ僧ラシクナイ。僧タラバ益暴。暴ナラバ愈※(二の字点、1-2-22)僧ラシイ」と。
またこんな洒落た古言もある。
一字でいえば「僧」
二字でいえば「和尚」
三字でいえば「鬼楽官」
四字でいうならば「色中餓鬼」だと。
なぜ色事と坊主とが古来こんなに観られているのか。といえば、金持は金持で財貨や内輪事のなやみが多く、妻妾何号の数はあっても、とかく色情海の底までは溺れきれない。また貧者では、労働のつかれ、あしたの米ビツ、また、せまい屋根の下では、病人やら子供やらで、しんそこ女房に春情をゆるし、うつつを抜かすわけにもゆかない。