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しん・すいこでん
新・水滸伝
吉川 英治
「日本」講談社、1958(昭和33)年1月号~1961(昭和36)年12月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 684,899 字 · 1374 页
「泣くな。……悪かった」
楊雄は、ごくっと、乾いた口に、息を呑んだ。元来が一徹である。真にうけると、急傾斜する。
ど、ど、ど、と足音あらく階段を降りて行った。そして隠居所の潘爺さんを呼び起し、ふた言三言、何かいっていたと思うと、まだ空も暗いのに、役署の方へ行ってしまった。
潘爺さんはまごついた。「――今日限り角の肉屋をたたんじまえ、店の諸道具も、豚も羊も物置へ叩ッ込んで店仕舞いの札を出せ」と、いいつけられたのである。またすぐ役署からは牢屋勤めの楊雄の配下の者がやって来て、たちまち外から戸をコジ開け、潘爺さんの手も借らず処理してしまった。そして豚の股を何本も肩にかついでゲラゲラ笑いながら退散した。
事の急変と、その荒ッぽさに驚いたのは、店の一室で寝ていたあだ名、※命(命知らず)三郎の石秀である。むらむらッとしたが、すぐ否と、胸をなでさすった。
「……兄貴に科はねえことだ。現場を抑えぬうちは決して言いなさんなよと、あれほど堅く断ッといたのに、つい女の顔を見た業腹まぎれ、責めなすったに違いない。そこで淫婦の持ち前、逆手と出やがったものとみえる。ふふん、考えてみりゃあ、世間ありがちな犬も食わねえことかもしれねえ。