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しん・すいこでん
新・水滸伝
吉川 英治
「日本」講談社、1958(昭和33)年1月号~1961(昭和36)年12月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 684,899 字 · 1374 页
すまないが、明日の午、城門外の翠屏山へ来てくれないか」
「翠屏山? あの人里離れた山の上か」
「そうだ、きっと待ってるぜ。久しぶりに一杯というところだが、お互い胸のつかえを持っていては、美味くもあるまい。あしたをすませた上でとしよう。じゃあ石秀、間違いなく」
と、楊雄は再度念をおして、帰って行った。
あくる日、石秀は、旅包みを背へ斜めに結び、
「おやじさん。お世話になったね。また旅烏さ。あばよ」
と木賃のはたご代を払って出て行った。いずれともなれ、もう薊州にはいないつもりらしい。
翠屏山は、薊州東門のそと、郊外二十里のところ。全山は墓地であり、丈なす草、樺、白楊の茂み、道は磊々の石コロで、途中には寺も庵もなく、ただ山上に荒れ朽ちた岳廟があると聞くばかり……。
「ほ。轎屋か。そこにいる連中は」
「へえ、轎屋です。楊家の旦那と奥さまをお乗せ申して来たんで……。するってえと、岳廟のお詣りをすますから、麓で待てと仰っしゃいます。そこでこう、暢気にみんなで御酒を頂戴しているという寸法でござんして」
「そいつアいい。めずらしいお日和だからな。酒も風流に飲めるだろう。……じゃあ楊雄さんご夫妻は、もう先にお着きだね」