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しん・すいこでん
新・水滸伝
吉川 英治
「日本」講談社、1958(昭和33)年1月号~1961(昭和36)年12月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 684,899 字 · 1374 页
うじゃないか……と、うまく誘い出して来たわけさ」
「それはいいが、なんでまた、こいつは余りに酷い仕置じゃないか」
「酷いって。……うむ、それは君が、この楊雄へ義理立てに言ってくれるのだろうが、石秀、君のほんとの腹では、八ツ裂きにしても飽き足らない思いに違いあるまい。町の俗謡を君だって聞いてるだろう。病関索の楊雄は、もう薊州では男がすたッた。君ももうそんな義理立ては捨ててくれ。……やい、巧雲」と、彼は一歩、女へ迫って。
「さ! 一切を懺悔して、おれの義弟にあやまれ。てめえは、二重三重に、亭主を誑らかしただけでなく、あらぬ罪を石秀にも着せ、始終、石秀がうるさく自分に口説き寄って困るなどとぬかしたろうが」
「……すみません! あれはまったく私の一時のつくり言。……石秀さん、うちのひとに詫びてくださいよ。後生だから」
「ふざけるな。女房の不始末は亭主のおれが始末する。石秀が何といおうと今はこのおれが堪忍ならぬ。……石秀、証拠の品は持って来てくれたろうな」
「これですかい」
石秀は、背の包みを解いて投げ出した。如海の法衣と頭巾である。ひと目それを見ると、さすが巧雲も真白な肌を鳥肌にし、髪の根もよだてて顔を横にした。