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しん・すいこでん
新・水滸伝
吉川 英治
「日本」講談社、1958(昭和33)年1月号~1961(昭和36)年12月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 684,899 字 · 1374 页
「なぜだろう。行けども行けども、伏兵がつきまとうのは。いかに祝朝奉の勢力でも、こう手兵の多いはずはないが」
「そうです。正規の兵ではありません。あれは祝家荘の民兵が、魂魄燈の合図にあやつられて、あっちへ動き、こっちへ廻り、いわゆる変現を見せているので大勢に見えるわけです」
「なに、魂魄燈の操作だと?」
「ごらんなさい。あの高藪の上に、ふらふらと、人魂のような赤い挑灯がしきりに暗号を振っているでしょうが」
「オオあれがか。花栄、花栄」
「なんですっ、副統」
「いまの話を聞いたろうが。君は空行く雁をさえ射落すほどな弓の達人だ。あの遥かな赤い灯を射消せまいか」
「造作はありません。こころえました」
キ、キ、キ……と引きしぼった花栄の弓弦がぶんと鳴ったと思うまに、遠い所の一点の火光が、とたんにぱっと掻き消された。それからは、もとより訓練もない土民兵のこと、闇はしどろな気配だけだった。いや、するとすぐ一颯に散り去った木の葉のような跡を、一隊のひづめが地を打って近づいていた。遊軍の李俊と秦明の隊が、彼らを駆けちらしつつ合流して来たものだった。
いつか朝となっている。全軍は村はずれの一丘に集合して、からくも死地をのがれえた無事を見合い、さて、人員点検の段になると、