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しん・すいこでん
新・水滸伝
吉川 英治
「日本」講談社、1958(昭和33)年1月号~1961(昭和36)年12月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 684,899 字 · 1374 页
あるいは義心の人に報ゆるに義心をもって接しようと努めているのかもわからない。灯は闌けて酒興も酣に入ると、
「どうです、魯達どの。こんな街中では気もゆるせません。ひとつ私の田舎へきて、ゆっくりご逗留なさいませぬか」
「かたじけない。して田舎のお屋敷というのは」
「わずか十里の郊外、七宝村と申す静かなところですが」
「なんらのあてもない身空。甘えるようだが、そいつは一つご厄介をねがおうか」
この話には、翠蓮父娘もわがことのようによろこんだ。かくて趙の長者と馬を並べて、魯達が山紫水明な七宝村へ入ったのは次の日のことだった。
長者の邸は富に飽かせたものである。魯達には窮屈なほど下へもおかない。彼の恐縮を、趙は笑って、
「なにもそうお固くなるにはおよびませんよ。四海みな兄弟という言葉がある」
げにもそうだが、世間はそうではない。余り長居も――と十日目ごろには暇乞いをと思っていると、その晩の酒宴で、趙がこんな相談の口をきりだした。
「へんなおすすめだが、これも宿世の約束ごとやらも知れぬ。……とお考えなすって、ひとつ僧籍にお入りになってみるお気持はありませんか」
「えっ坊主に。