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しん・すいこでん

新・水滸伝

吉川 英治

「日本」講談社、1958(昭和33)年1月号~1961(昭和36)年12月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 684,899 字 · 1374 页

青空文庫

のみならず毛家の鼻グスリは奉行以下、すべてに行きとどいているうえ、与力の王からは「……いずれ一服(毒薬)ものだ」と囁かれていたので、

「やいっ、土下座するんだ。ええいっ、面を上げろ」

と、のッけから噛みつきそうな権柄で、身柄、罪状の書類を片手に。

「……ええと、なんだって、両頭蛇の解珍と、双尾蝎の解宝だと。蛇が兄きで、蝎が弟か」

「へい」

「へいだけじゃ分らねえ。どっちなんだ」

「仰っしゃるとおり、兄の解珍が両頭蛇と呼ばれておりますんで」

「てめえが、弟で蝎か。覚えとけ、おれのつらを。ここへ入ッたからにゃ、蝎も蛇も、のさばらしちゃおかねえぞ。おい牢番」

「はっ」

「こいつらを一番湿めッぽい奥の大牢へぶち込んどけ」

「こころえました。さッ起て」

引っ立てて行ったが、人前のきびしさに似ず、その牢番は人なき牢屋まで来ると急に声をひそめて兄弟へいった。

「……わしを知らんか。わしをよ」

「えっ?」

「おまえ方は、提轄(憲兵)の孫さんとは?」

「あっ、あの人なら、いとこです。母かたのいとこですが」

「わしはな、その孫提轄の小舅にあたるもんですよ」

「へええ? ……」と見すえて。「ではもしや、楽和さんてえのは」