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しん・すいこでん

新・水滸伝

吉川 英治

「日本」講談社、1958(昭和33)年1月号~1961(昭和36)年12月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 684,899 字 · 1374 页

青空文庫

その間におばさんは楽和にむかって礼をのべ、またくれぐれ兄弟のことを頼み、きっと助け出してみせるからと涙を拭き拭き誓って言った。

楽和は牢屋勤めの身、すぐ城内へ戻って行ったが、入れちがいに、おばさんの亭主孫新が、何事かと息せき切ッて帰って来た。この人、眉目奇秀、体躯は長くしなやかで、どこか元、武士の風がある。

祖先は瓊州の出で、軍官の裔であり、いまでも実兄の孫立は、登州守備隊の提轄隊長の職にある。兄弟ともに“尉遅恭”――唐代の勇士――の再来だと称され、この弟孫新の方は小尉遅とよばれていた。

「……ふうむ。そいつはえらい災難にひッかかったな」

と、孫新は女房から聞く一ぶ一什にただ唸って、深く腕ぐみを結んだままだったが、やがてこうぼそっといった。

「なにか。楽和さんには、吝ッたれずに、たんまり銀子を預けてやったか」

「そんなことを抜かッてはいませんよ。地獄の沙汰以上、牢屋まわりは金ですからね」

「よし。じゃあこっちから助けに行くまで、何とか工合よく計っておいて下さるだろう。あとは思案ひとつだ」

「思案ていったって、おまえさん、どんな思案をお持ちなのかえ」

「べらぼうめ。