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しん・すいこでん

新・水滸伝

吉川 英治

「日本」講談社、1958(昭和33)年1月号~1961(昭和36)年12月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 684,899 字 · 1374 页

青空文庫

を抜いて包の胸元を刺しつらぬいた。

「うまくいった!」

「さ、早く外へ」

このときもう牢営中は蜂の巣をついたような騒ぎとなっていた。孫立と孫新は牢門を破ってあばれこみ、おばさん、楽和、解兄弟とひとつになり、また、べつな一手の鄒淵、鄒潤の二龍は、はやくも奉行所を突いて、毛家の女婿の与力王正の首をひッさげて合流して来た。

「さ。ひきあげろ!」

「目的は遂げたというもの」

「これ以上の殺生は無用無用」

町中はもうたいへんだ。軒並みバタバタ店を閉じている。しかし追って来た奉行所役人も州兵も、馬上、弓をつがえて殿軍していた相手が、

「やや。孫提轄だ?」

と分ってからは、たれひとり近づこうとはして来ない。そのまに、おばさん、解の兄弟、そのほかみな、辻風のように、城門の外へ奔り出していた。

孫立もあとから馬で十里牌へ追っ着いた。店の前には貨財を積んだ馬、車、旅支度をした若い者。すでに立退く準備が待ちかねている。

「わたしは馬車より馬がいいよ」

おばさんは一頭の馬に乗る。孫立の妻は、馬車の上だった。馭者はさっそく鞭を鳴らす。

すると二十里も行かぬうちに、解宝、解珍が言い出した。