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しん・すいこでん
新・水滸伝
吉川 英治
「日本」講談社、1958(昭和33)年1月号~1961(昭和36)年12月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 684,899 字 · 1374 页
追って来た孫立は、井戸べりに片足かけて、中を覗き込み、
「おあつらえ」
とばかり手の一鎗を逆にかざし、ドボンと投げ突きに井戸底の物を突き殺した。――そして、あとから来た楽和にむかい、「鉄叫子。すぐ奥へ行って、※大虫やおれの妻に助太刀してくれ。そして祝夫人や侍女などは殺さぬように、どこか一つの女房(女部屋)へ押しこめておくがいいぜ」
と、早口に言い渡し、そして彼自身は、郭北十八倉の一つ三番蔵の方へ宙を飛んで行った。
すでに、蔵番の哨兵一隊は、そこらじゅうに叩きつけられてしまい、三番蔵の鉄の扉は、滅茶苦茶に破壊されてしまっている。
ここを襲ったのは解珍、解宝の二人を先頭に、さきごろ一行の供人に仕立てて一味の中に入れ共に泊りこんでいた仲間の手下たちだったのである。いうまでもなくここに囚われていた時遷、楊林、黄信、矮虎、秦明、飛、石秀の七人の救出のためにだ。
「火を放けろ」
「いや倉庫はよせ。あとでは、こっちの頂戴物だ」
「ならば櫓を」
「そうだ、まず荘門からぶッ潰せ」
「馬糧を撒いて、将台も焼き払え」
これだけの屈強が突如、城の心臓部から暴れ出したことである。鼎が沸くなどという形容も充分ではない。