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しん・すいこでん
新・水滸伝
吉川 英治
「日本」講談社、1958(昭和33)年1月号~1961(昭和36)年12月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 684,899 字 · 1374 页
けれどこれは嘘でなかったのである。ほどなく山寨の下からこれへ登って来る群れの蟻行列のごとき人影が見えだした。近づくに従い、李応は、アっ! とばかり驚いた。その中にはわが妻子が見える、舅や年来の召使いまでがいる。いや覚えのある家財道具までが百人余りの人間と数十の驢馬や牛の背に積まれてやって来るではないか。
「なんとしたことだ?」
彼は走り出して、まず妻にたずねた。妻や老人たちは、口をそろえてこもごもいった。
「旦那さま、ようもまあご無事で。あなたが、州の奉行所へ連れて行かれると、その晩でした。またぞろ百人ほどな者が来て、否やもいわせず、この通りにしてしまい、なんでも来いというままに、これへ曳かれてまいりました。――もう帰るにも帰る所はございません。荘を出るやいな、屋敷は炎になってしまいましたから」
聞く李応は、唯々、あきれるばかりだった。すると、後ろから追って来た宋江が、彼の前に膝をつき、両腕を交叉して、地に伏さんばかり詫びて言った。
「おゆるし下さい。まったくは、あなた方をあざむいたのです。それも久しい間、撲天李応というお名を聞き及び、その為人をお慕い申していたからのことで、われらの内に、あなたを引入れたい一心のほかでしかありません。