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しん・すいこでん
新・水滸伝
吉川 英治
「日本」講談社、1958(昭和33)年1月号~1961(昭和36)年12月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 684,899 字 · 1374 页
というよりは土根性から好きなのである。禁欲意識がふと破れると、逆に度を過ごさせるものでもある。さあいけない。苦労性なおふくろに、このグデングデンは見せられないと頻りに悔やむ。だが、友達と別れてからも、なかなか酔は醒めないのだった。
すると賑やかな演劇囃子が耳の穴へ流れこんできた。ははあ、いつぞや李小二が噂していた掛小屋だな。木戸の呼び声、旗幟のはためき。それに釣られてふらふらと雷横は泳ぎ込むように木戸口を通った。役署の「顔」が無意識な習性にある。小屋者たちも心得ていて、
「ほい、県の旦那だよ」
とばかり、客席の中でも上等な桟敷へご安座を奉る。といっても板の腰掛け、丸太の手欄。どっちみち雷横は“酔ざまし”が目的なのでもうすぐそれに頬杖かけて、居眠ッていた。
舞台では今し水芸の女太夫白秀英が観客の大喝采をあびてサッと緞帳のうしろに姿をかくしたところらしい。
胡弓、長笛、蛮鼓、木琴、鉦などの合奏にあわせて真っ赤な扮装をした童女三人が炎の乱舞を踊りぬいてしばらくお客のご機嫌をつないでいる。――それが引っ込む。曲が変る。――と今度は、孔雀扇を胸に当てた白衣黒帯の老人が尖ンがり靴をヒョコヒョコ舞台中央まで運ばせて来て、オホンと一つまず客を笑わせ、