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にっき

日記

宮本 百合子

27 一九四四年(昭和十九年)

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 62,807 字 · 126 页

青空文庫

四月二十二日

匹敵するどころではない。文学において人類は、本能の自覚以前において登場するものではなくて(それは科学)文学は考えることを知った人間の時代からはじまる。つまり皮質的人間になってから、そして第二命令システムをもつに到ってから――人類の文学とともに文学には登場すべきものである、そういうことを痛感した。

四月二十二日(土曜)

深田久彌「命短し」をよむ。午までかと思ったら三時まで。パンのべん当をたべて待った。半分以上読む。この作家の面白さ、明るさの姿態は、男性的というよりも不思議に気甲斐性のある女の下駄の音のようなところがある。軽さ、リズム、しな。それらの中に感じられる浅さ、小ささ、「このひとも気を張ってねえ」と云ってやりたい心持のところ。「弓」という奈良時代の背景の作品は、狙いどころの素朴な浄らかさ、生命の健康を求める心はよくわかるが、やはり話しかたに意識された素朴への憧れで、本質は男性的であるとは云えない。不思議だ。犀星は乙にからんでひねた男の感じ、深田は男の若さというより二十四五のいい年増の溌溂さめいた女らしさに立つところ、不思議だ。スポートのことかいていた時代から見ると小説達者になって、そして、活々とした、しな、になった。