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にっき
日記
宮本 百合子
27 一九四四年(昭和十九年)
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 62,807 字 · 126 页
四月二十日
四月二十一日
台所も可愛い。二階ひとに貸すように区切ってある。紀さんの家庭における姿は、しおたれ紺がすり着て髪くしゃ、ふところで。協電社の倉知さんではなくて、紀さんという肩の下り工合面白い。こういう風に外へはり内へくつろぐたちなのだと思う、弱気の部也。
十二時頃帰る。国と二人だと真暗い日暮里から安心してかえれる、それがくやしい。こういうちょいとしたことで、永い年月の間にはひとり暮しの女の気張りが身につくのだ、と。月の夜や夜の気分のいいとき、いつも自分は思う、ああ二人なら歩くのに、と。そして、歩けない、ということで仕事の上にやはり凹んだところを感じる。
四月二十日(木曜)
けさは咲出発故、自分台所をしてやる。しっかりといいお握りをこしらえてもたせてやる。
〔欄外に〕
咲開成山へかえる、国上野まで自転車で荷もつもって行き、自分うば車で団子坂までゆく。坂から雑炊食堂、蜒々として列をつくっている。
四月二十一日(金曜)
野上さんにかりた『或る原始人』自分は面白くなかった。社会形成以前の、本能の開化の過程を、火をとる迄かいている。
フランス人の現代生活と対比して、一種の啓蒙になるだろうし最も初源的な形において人間を見ることに珍しさがあるかもしれないが、これが面白いなら、家族や私有財産の発生から国家形成に到る過程をかいた古典の面白さは