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にっき

日記

宮本 百合子

27 一九四四年(昭和十九年)

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 62,807 字 · 126 页

青空文庫

三月二十五日

そうだと思う。一言ももう国とは話さず。

咲かえる。畳廊下でそのことを云う。

「ああやっぱりお父ちゃまに話しをして貰ったのはわるかったわ、そういう意味じゃなく、一時あっこおばちゃんが国府津かどこかへ籍をうつしてくれられたら、と云うことだったのよ。」成程、籍をここに寄留させておくのがいけないというのだと分った。いよいよ承知することとは違う。そして、咲が、結局国と同じ考えかたをする人間で、只外交辞令だけ円滑なのだと思う。いやさ限りなし。「ひぐまさんとじゃ、きっとあっこおばちゃん疲れて病気すると思うわ」「だって其とこれとは別じゃないの」「そりゃそうよ、病気したって仕方がないわ」上気せて云うこととは思う。しかし、しかし

三月二十五日(土曜)

いい天気。一群がいよいよ開成山引越。

太郎、健之助、やす子、おみや、のじ、梅、咲、国、トランクとふろしき包ゴテゴテ。そのとき迄大富をたよりにしているが来ず、近藤さんの一家に大世話になる。

○家が森とした午後になって、二階で机の前にいて、咲があんなに支り滅裂なことを云ったか合点が行った。咲は国から一時はなれたくて、国を何とでもして納得させたくて、ああいう滅茶を云ったとわかる。