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にっき

日記

宮本 百合子

27 一九四四年(昭和十九年)

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 62,807 字 · 126 页

青空文庫

十月二十五日

のまま公判調書、決定がつくられていることの妥協でない(西沢の場合、彼の心理的状況について考慮しないで殺意を否定しないままに)ことを具体的に例証して陳述した。こういう結果は、統一審理が行われなかったことによる。転向、非転向の間の差別も著しく、技術的には予防拘禁法があるから刑期を長める必要はないのに、非転向のものとそうでないものとの間の凹凸は甚しいということ。三宅正太郎の「治安維持法」を引用して、法の適用についての注意を促した。本事件の経過において、警察と予審に長年月を費して病体となり統一審理も不可能となったこと、そのため事件の真相は明瞭たり得なかったこと、「私の苦い経験によってみても」警察と予審は可及的短時日をもってすべきである、ということを力説した。

この陳述をきき、自分、宮がしんから気の毒となった。可哀そうでたまらない。多くの人は何と浅薄に宮のガンばりというものを見て来ていたろう。おそらくは裁判長さえも。

〔欄外に〕綜合防空演習の日。

十月二十五日(水曜)

六月十三日からはじまった公判が終りに近づいた。

この公判が、法廷で行われ、自分が聴くことの出来たということには、計り知れぬ意味がある。