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にっき

日記

宮本 百合子

27 一九四四年(昭和十九年)

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 62,807 字 · 126 页

青空文庫

二月二十九日

昨夜デスクの鍵失ったとさわいでいたが、いい工合に下に落ちていた由。

川越のマッチ二階ことわって来た、はじめの話とちがうからと云って。理由はおそらく別なり、おいち婆さん、頭をはたらかしたというところだろう、そう残念でもない。が、又祖師ヶ谷へたのまなくてはならなくなった、寿工合のいいところへもってこれれば、たのむのだが。

山口の共済病院宛五十円送る。母へ

今夜八時から明朝八時まで火種一切なしでやるという空襲くんれん。

二日分の糧食は必ず用意せよ、と云っている。

〔欄外に〕

朝快晴 午後一時すぎ頃、皆が大富で出かけたあと、急に一天かきくもる(あとできくと煙幕だったそうだ)ひどい風になった。

子供の移動――丈夫でない子の移動はなかなかのことだ、今の時代でさえも。

二月二十九日(火曜)

椅子があやしげな音を立てて軋むから、きっと今にのりつぶすと思っていたら、案の定、ベキリと背がもげた。宮、いかにもおかしそうにしている。自分もおかしくかわゆい。バルザックが幾つめをのりつぶしたと云っているのを思い出す。いずれも相当の力みなりと面白い。

かえりに下駄やにまわる、下駄二足くれた。