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ごくちゅうへのてがみ

獄中への手紙

宮本 百合子

05 一九三八年(昭和十三年)

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 229,387 字 · 453 页

青空文庫

二月十二日

手拭のかかっている室の右どなりです。左の別棟がお湯。小さい仕切った室があって大助りです。山のダイダイの木に黄色い実がなっていて、光井の村の景色を思い出します。梅は末です。紅梅も末。雪益※(二の字点、1-2-22)。

二月十二日 〔巣鴨拘置所の顕治宛 熱川温泉つちや別館より(封書)〕

二月十二日 晴 第七信

この手紙は、伊豆の東海岸のいかにも晴れた日光を受けながら、つちやという宿の八畳の室のカリンのテーブルの上で書いて居ます。

八日には、元気そうにしていらしったので安心でした。あの風邪流行の中で鼻かぜですませたのはお手柄お手柄。あのときお話の大島の着物、インバネスのこと。あなた何か混同していらっしゃるのではないかしら記憶の中で。もう一度前後のことをよく思い合わせて思い出して御覧なさいませ。ひさのお使いは無駄足だったのですから。

ところで、二月二日に書いて下すった第三信、九日の朝立つときに着いたというのは実に大出来です。昨年のうちに、やはりこの位の日数でついてうれしかったことがあったけれども。あけてよんで、国府津などにも持って行った例のベルリン製の紙トランクに入れて又こっち迄持って来、今はやはりこの紙の左において書いている。