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ごくちゅうへのてがみ
獄中への手紙
宮本 百合子
05 一九三八年(昭和十三年)
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 229,387 字 · 453 页
八月四日夜
イルマさん(是也の細君)ならいい先生だろうが豪徳寺ではね。鶴さん外語のドイツ語の夏期講習に通っています、感心です。除村さんは親切にやると露語をうけている人が云っていた。これから火野氏の「麦と兵隊」をよむ。ではまた。あした雨でないと布団をもってゆくのだけれども。寝冷えをなさらないようにね
八月四日夜 〔巣鴨拘置所の顕治宛 目白より(封書)〕
八月四日 第三十九信
昨夜から書きかけていた手紙があったのだが、それはやめてしまって別にはじめます。きょうのことは、本当にわるうございました。いろいろとさぞおいやだろうとすみません。ユリは、もとよりあなたの体のことは実に実に思っているのだけれども、又一方ではそれよりほかのこともわかっているつもりです。だから、時によっては、その心痛をどんなに努力してもちこたえるかということは、この一年半の経験でよくわかって頂いていると思います。体のことについて世俗的な女房風なはからいをやろうというようなこせついた魂胆はなく、単純にかんちがい納得ちがいをしたのです。そして、自分でそう合点したので却っていやに手とり早いようなことをやって、やっぱり女房並にアンポンであるようで本当に辛い。