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ごくちゅうへのてがみ

獄中への手紙

宮本 百合子

05 一九三八年(昭和十三年)

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 229,387 字 · 453 页

青空文庫

十月二十一日

Tさんは今度こそ商売をかえるでしょう。私にその商売(以前やっていた)のカラクリを大変さっぱりと話しましたから。ああさっぱりと見栄をなくしてその悪ラツさをひどいもんだと話す気分なら、戻るまいと思います。先頃は私がどう云おうと、決して話を、損する、儲けるという深度以上にはうけつけなかったし、一通り通用する商売をやっている体裁をつくって居ましたから。小母さん、その話をきいて、ホウ、まア何たら、と唇をとがらしておどろいていらっしゃる。

さあこれから乾した布団を入れます。そしてTちゃんの洗濯物を乾させます。そして夕刻まで本をよみます。義務教育と称する本を。今夜はロールキャベジをこしらえます。招魂社で火花の音がしています。

では又。日がかげって来たこと。私の体温は六・八が最高でつづいています。(こんなかきかたでは叱られそうですが、きょうはこれで御勘弁下さい)明日お目にかかって。

十月二十一日 〔巣鴨拘置所の顕治宛 目白より(封書)〕

十月十七日  第六十二信

夕暮が段々迫って来かかる。テーブルのところがすこしずつ暗くなって来ました。薄い一冊の文庫本をさっき手紙をかき終ってから読みはじめている。