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ごくちゅうへのてがみ
獄中への手紙
宮本 百合子
05 一九三八年(昭和十三年)
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 229,387 字 · 453 页
九月二十三日
買っておよみ下さい。婦人の作家が、その生涯のうちに、皆が、いくつか、どんな形でか、この作品のようなものを書かなければならず、書いているということ。そういう点からもこの作品は或本質的な意義、価値をもっているもの故、もっと十分書きつくせない事情のあるのが、惜しゅうございます。
俊子さんの昔の作や「伸子」や「小鬼の歌」の夫婦の生活や「乳房」やそして「くれない」や同じ作者の「わかれ」という短篇などと合わせよみ、考えると、女の生活をうち貫いて流れている歴史の波濤の高さが胸にひびくようですね。きょうは久しぶりで林町へ出かけます、うちにいる栄さんは、兄が入営で一日いないから。
(自注13]病人さん――杉山智恵子。
九月二十三日 〔巣鴨拘置所の顕治宛 目白より(封書)〕
九月十九日 第五十五信(封筒の糊がわるくて張り直しをしました。)
きょうは、大変に珍しいところから手紙を書いて居ます。林町。食堂のテーブル。午前十一時すこし前。
きのう林町へ来て見たらお客がいて、いろいろゆっくり話したかったので泊り、けさ国男さんが出かけてから、南の縁側ですこし日向ぼっこをしながら本をよみ、食堂へ来てこれをかき出しました。