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ごくちゅうへのてがみ

獄中への手紙

宮本 百合子

05 一九三八年(昭和十三年)

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 229,387 字 · 453 页

青空文庫

六月四日

そして、私たちは健全な豊富な意味で益※(二の字点、1-2-22)書生生活に腰を据えなければならないのです。歌舞伎座が立ちゆかず、やすい芝居をするようになるそうです。築地はハムレットを千田がやっている。ひさは姉が結婚して、農繁期になるのに田舎では雇う人手もないというので一・二ヵ月かえります。その代りにひさの友達で栄さんという子が来ます。この子とひさと二人で島田に行っていた間留守番をして居りました。ひさとか栄とかかちあう名はあるものね。但この栄はずっとしぼんで素質の小さい栄ですが。では又。この頃真白い紙はタイプライタアの紙しかない、何故かと思います。皆スジ入り。お大切に。

六月四日(消印) 〔巣鴨拘置所の顕治宛 目白より(はがき)〕

このハガキは差入についての走りがき。

※帯は夏だけもてばよいつもりです。あの方が軽くてすこしはよいかと思います。※二枚の単衣のうち、紺の方は、些かおしゃれの分です。もう一枚の方がいくら洗ってもよい分。二日にそのことを忘れて申しませんでしたから。紺はそちらで洗わぬこと。※ああいう下にはくものはいかがなものでしょう、暑くるしくあるまいとも思いますが、試みに。