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ごくちゅうへのてがみ

獄中への手紙

宮本 百合子

05 一九三八年(昭和十三年)

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 229,387 字 · 453 页

青空文庫

八月二十五日

そういうものの裏がえった神経の作用にあやつられないようにしなければならないとも思います。きょうはこの間からの事について書くわけだったのですが、電話の切られかたが余り苦しかったから、ほかのことが書けない。それでこの手紙となった次第です。

きょうは、いろいろをぬきにしてすこし工合がおわるそうでしたが、いかがですか? あなたの横になっていらっしゃる布団の傍に坐って、永く永く何といろいろのことを話したいでしょう! 何とあなたの笑顔を見たいでしょう! 何と「ユリばかばか」と云われたいでしょう! これは私の飢渇です。

八月二十五日 〔巣鴨拘置所の顕治宛 目白より(封書)〕

八月二十四日  第四十五信

きょうは心も軽く鼻歌まじりに栄さんを督励して本箱を置換えたりベッドを直したりして、又元のエハガキのような位置におちつきました。この間うちから落付いて勉強したくなっていてそれにもかかわらずいろいろまとまらなかったが、きょうからは楽になったところがあって、そろそろはじめます。当分引越さないときまったからには、地震のとき二階の廊下が本棚の重みで抜け落ちたりするといけないから、本棚を二つ重ね(あの重ね本棚の小さい方)下の四畳半において材木屋へ行ってモミの五分板二枚一・七〇也買って来て、ベッドに入れました。