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ごくちゅうへのてがみ
獄中への手紙
宮本 百合子
05 一九三八年(昭和十三年)
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 229,387 字 · 453 页
十一月九日
さて、余り長くなるといけないから、これで一区切り。この頃は大変風邪が流行ったそうです。喉が痛いと合本もって来た女のひとも云っていました。きょうは、でも本当におそい秋らしい。青空の前に鋼色の欅の梢が奇麗です。この二階はすてがたい眺望あり。では又。
十一月九日 〔巣鴨拘置所の顕治宛 目白より(封書)〕
十一月八日 第七十信
智恵子さんがなくなった通知のハガキを貰ったのは六日(日曜日)の午後八時ごろでした。ああ、到頭と思い、すぐ出かけてお通夜をしようと思った。けれども、まざまざと、最後に会ったときの体も心も実に苦しげであった様子、心の底までうちあけたくて、しかも自身の愛情の誇りのためにとりみだすまいとしている懸命さ、その力一杯だった顔が浮んで、私が行ったら、本当に寝ていてももう一ぺん生きて来て、「ね、私到頭死んじゃったのよ」と云いそうで、迚も横えられてあるようなところへ行けなかった。そう一言云ってホッとしたいためにだけでも、もう一遍おき上って来たそうで。この十ヵ月間の溜息をしんからつくために。
この七年の間の生活と努力とを、最後までまともな場所へおいて理解するために、彼女は実に健気に生きました。