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ごくちゅうへのてがみ

獄中への手紙

宮本 百合子

05 一九三八年(昭和十三年)

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 229,387 字 · 453 页

青空文庫

三月二十四日

今村さんの亡くなったことはいつか一寸お話ししたと思いますが覚えちがいであったかしら。友達たちはあのひとのために実によくつくしてやりました。それから九州の兄の家へかえってそこでも自分が思っていたよりはよく扱われていたが、遂に亡くなりました。詩は集に入っているののほか、雑誌にのったのも、大体はわかっているし、とってあるようです。今野さんの詩もやはりまとめてとってあります。あのひとは兄さんの家庭があるだけで、あのひとのあとで困っている家族はないのです。

エドガア・スノウの本(自注3)が半年かかって到着しました。見せてあげたいと思います。きょうの手紙は大変家事むきのものになりました。これから二三時間仕事をして、それからもらった切符で前進座を見ます。皆ここのひとは上手くなりました。山岸しづ江さんなども。阿部一族(鴎外)の映画は好評です。今日は江戸城明渡し(藤森)です。では又。どうかそのお元気で。

(自注3)エドガア・スノウの本――エドガー・スノウ『中国の赤い星』。

三月二十四日 〔巣鴨拘置所の顕治宛 目白より(封書)〕

三月二十日  第十四信。

今夜は何という春めいた晩でしょう。