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ごくちゅうへのてがみ

獄中への手紙

宮本 百合子

05 一九三八年(昭和十三年)

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 229,387 字 · 453 页

青空文庫

六月十二日

敷布団のことです。もうそれも相当になったでしょうが、夏のうちにとりかえてはどうでしょう、そして頭の方の角を縦長の長方形から、上部の角2箇所を斜めに切り取った形の図(こんな形に)した方が、そして今よりすこし幅をせまくした方が(普通に)便利ではないのでしょうか、丈の点で。どうか御研究下さい。ではお大切に。おなかをお大切に。夏は妙に、却っておなかの冷える感じがあるのね。

六月十二日 〔巣鴨拘置所の顕治宛 山口県島田より(封書)〕

第二十七信。

今裏の鶏舎のところでお母さんと徳山の岩本の小母さんとが、ごみを焚していらっしゃる。駅のところでブレーキをきしませながら貨車が停車しました。この頃は貨物自動車の数が著しく減ったので、家の前通りは随分しずかです。夜中に耳についた貨車の軋りなどがこんな昼間によくきこえて来る。この汽車が蒸気を吐く音やギギーときしってしずかにとまる音には一種独特の淋しさがありますね。去年四月にきたときもそう感じたが。

うちは、きょう初七日(自注4)でやっと少し落付きました。今までは全く手紙をかきに二階に上っていることが出来なかった。お葬式は喪主があなたでしたから私の用も多かったわけでした。