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ごくちゅうへのてがみ
獄中への手紙
宮本 百合子
05 一九三八年(昭和十三年)
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 229,387 字 · 453 页
十一月十五日
その下で将に将に花咲かんと願った耀かしさ、そして暖かさ。
机の前で勉強をしている。折々云いつくせない光の波が甦って来て私をつつむために、きつく胸に手を当てながら。
一つ御紹介いたしたいものがあります。それは一冊の帳面。本の整理のために使っている大学ノートと同じ大判で、紙表紙はおとなしい緑っぽい色です。二本の枝がノートブックという字を上下からかこんで若葉をつけて、背のクロースは調和のよい藍色。そしてタテケイです。平凡だけれどもどことなく生新ですっきりもしている。今日からこれが私の勉強帳になることになりました。これからはずっとよむ本と並べておかれ、いろんなことをかきこみます。勉学に関することを。
オイゲンという先生は、大変な混雑物ですね。こういう混雑を、かくの如くつかみ出してはっきりさせてゆくということは、実に大したことです。ここでは二重に学びます。云われていることの正当さと、云いかたの正当さについて。混雑をどこでとらえてどのように奇妙な撞着のモメントを追究して示すかということについて。だが、これは私の哲学的読書力のギリギリのところですね。決して楽によめるなどという大言は吐けません。