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ごくちゅうへのてがみ

獄中への手紙

宮本 百合子

05 一九三八年(昭和十三年)

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 229,387 字 · 453 页

青空文庫

五月二十三日

ちょくちょく思いやります。私がそんなことを思いながらこれを書いている家の門には軒並みの旗が立っていて、物干しにはあなたの冬着が、名を書いたほそい紙片をヒラヒラさせながら干されている。

私は仕事に対する欲望が潮のようにさしのぼって来ているので、すこし肝のたった馬のような調子です。眼尻に力がこもって、口をむすんで。文学における全体と箇との問題などが、今日新しい機械論として出て居るのなどは何と興味あることでしょう。

『タイムズ』の文芸附録が今度スコットランドの現代文学の特輯を出しました。歴史的な小説をかく婦人作家が二人いることがはじめてわかりました。スコットランドはその自然の景観から、独特なロマンティシズムをもっている由。では又。セルと単衣羽織をお送りいたします。お大事に。

五月二十三日 〔巣鴨拘置所の顕治宛 目白より(封書)〕

五月二十二日  第二十五信

きのうの朝、下へおりて行ってテーブルの上を見ると、三月十四日とした封緘がおいてある。三月十四日、三月十四日 怪訝に思って手にとると封は開いてなくて、この間あなたが書いたよと云っていらした分でした。ひさが、「三月のがいま着くんでしょうか」