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ごくちゅうへのてがみ
獄中への手紙
宮本 百合子
05 一九三八年(昭和十三年)
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 229,387 字 · 453 页
四月三十日
私の盲腸は、はと麦と玄米と黒豆とを煎って挽いたものを煮てのむことで大分つれなくなりました。では又。寿江子のことを書くのを忘れた。この次、別に何でもないけれども。
四月三十日 〔巣鴨拘置所の顕治宛 目白より(封書)〕
四月三十日 第二十一信
さあさあと水道を出して洗濯ものをゆすいでいる音がしている。風呂場では水道の栓が来ていないから流し元でやっている。風の音が裏の電車の響を運んで来る。そしてすっかり障子を閉めていても、裏の北窓から見える青い空と気の遠くなるような欅の若葉の青々とした色と重みとがこの紙の上までさして来ているような心持。本当に初夏になりました。お体はいかがですか。やはり時々は寝汗が出るようでしょうか。どうか御大切に。リンゴをよく召上れ。よくすっかり噛めば腸にももう大丈夫でしょうし、腹の健康を増すためにもよいと思います。東北大で赤痢をリンゴ液で癒す実験に成功したこといつか余程前にも申しましたね。そう云い乍ら私自身は大して食べられないような工合で威張れないが。
きのうは祭日で歌子さんが休みなので、少々慰問のため、裏の武蔵野電車で二十分ばかり行った大泉の野原へ栄さんと三人で午後から歩きに出かけました。