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ごくちゅうへのてがみ

獄中への手紙

宮本 百合子

05 一九三八年(昭和十三年)

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 229,387 字 · 453 页

青空文庫

十月二十六日

ゆうべ夕飯を終って、『日本評論』別冊のスメドレイの「第八路軍とともに」の終りをよんでいるところへ、おひさが一束の手紙をもって来ました。その一番上にあなたからのがのっている。何と珍しいことでしょう、宵のくちのこんな時刻にあなたの手紙が来るとは、私は何だか部屋の敷居のところへ、電燈の光を肩に浴びてあなたの姿が立ったような瞬間の感じにうたれました。夜着くあなたからの手紙。何年もの間、朝しかうけとったことがなかった。朝、新聞とともにテーブルにのっている。私が起きておりて行って、それを見る。その感じと、しーんとした夜、外から真直来るあなたとは、何と違う感じでしょう。びっくりするような生々しいちがいがあります。迚も普通の手紙を見るときの顔付で見ることが出来なかった。肉体的で。二十四日の午後お書きになった手紙です。

そういう雰囲気の裡で読まれたので、云われていることは、本当にこわかった。おしまいに来て、御自分でもそのことを云って、すこし笑っていらっしゃるので、私も思わず笑いましたが。尤もなことだから、私は強弁は致しません。でも一寸云いましょうか。あなたへの心持から、私は自分から固執するところがあったとも云ったし、強弁のようなとも云うけれども、それをあなたから、そのままの文字で私に向って使われることは少し辛すぎるところ