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ごくちゅうへのてがみ
獄中への手紙
宮本 百合子
05 一九三八年(昭和十三年)
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 229,387 字 · 453 页
六月五日
手紙はこれとは別。
六月五日 〔巣鴨拘置所の顕治宛 目白より(封書)〕
六月四日(白い紙特にこの紙は書きよい、タイプライター用ですが。) 第二十六信
さっき十二時のサイレンが鳴ったところ。(この辺のサイレンは、学習院前の小学校で鳴ります。防空演習のときも)テーブルの上の寒暖計は八十度。つよい風。この二階はいきなり硝子で、それをあければフーフー吹きまくって勉強出来ず、しめれば温室的な欠点がある。すだれや何かでいろいろ加工してある次第です。下で寿江子の咳払いがきこえる。ひさはきょう国へ一時かえりました。代りとして栄さんというひさの友達が来ていてくれます。栄だのひさだのって、縁があるのね、とこの間は大きい栄さんと大いに笑いました。
二日の日には、原っぱを横切って通りに出て、一寸林町へよって、上野の松坂やへ出かけて下着などを買いかえると、いねちゃんが待っていて、久しぶりに夕飯を一緒にたべ、いろいろ喋り十二時頃かえりました。あすこもずっと女中さんなしです。それでも幸、体も丈夫でやっています。私の留守にひさすっかり冬ものを乾しておいたので、昨日は貴方への小包を送り出してしまうと半日、入れかえをやりくたびれた。