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ごくちゅうへのてがみ
獄中への手紙
宮本 百合子
05 一九三八年(昭和十三年)
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 229,387 字 · 453 页
私はこういう経験に際してはギリギリのところ迄自分を追いつめて見るから汗と一緒にひとりでに涙が流れました。
今年の夏は私たちの暮しには珍しい夏ですね。毎日でなくていいと仰云るけれども私は八月中は毎日行こうかと思って居ります。あなたの風入れになるばかりでなく、毎日きまった距離をきまった時間に歩くのが或は私の体にもいいのではないかという気がして居るから。その上、少くとも私には大変にくつろぎになり、たっぷりさになり、生活のめのつんだ成長の感じで、この一月からの緊張したものが健康にほぐされてゆく工合です。毎日会えるようになって私は自分が肩を楽にしているのにびっくりしました。ああやっぱりこんなに体をかたくしていたのかと思いました。十八九の頃からともかく自分の書くもので生活して来た人間が、その道をとざされたということは決して容易なことではない。神経にもつよく影響します。私は神経衰弱にならぬときめているから、それにはかからないが、知らず知らずの間に不自然な緊張があって、自分の勉強的仕事をやってゆくにも、おのずからたのしむ風のゆとりが欠けて極めて微妙な焦立ちが底に流れていた。