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ごくちゅうへのてがみ
獄中への手紙
宮本 百合子
05 一九三八年(昭和十三年)
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 229,387 字 · 453 页
すっかり書き直すなどということは実際には不可能ですもの。
こっちの暮しはきょうであしかけ四日目。九日にはね、午後〇時何分かに網代について、すぐそこからバスで伊東下田行が出かかっているのだが熱川の宿はどこがよいのか知らない。赤帽にきいたら福島屋が一番いい、電話をかけといて上げましょう、電話料二十銭。二十銭わたしてバスにのったら、伊東まで相当ある。伊東は乾いたようなあまりに風趣のない町に見えた。伊東から又下田行で熱川まで一時間余。すっかりで二時間余です。山の間の坂道の左手に熱川温泉入口とアーチが出来ているところを、ハイヤーでぽんぽんはずみ乍ら七八丁下った狭苦しいところに福島屋あり、途中番頭曰ク生憎満員でお部屋がありませんがともかくお迎えして云々。上って見ると夜具部屋のようなところしかない。そこで宿に電話で交渉させて、坂の途中にあったつちや別館の九号という室におさまったわけです。海からはすこしはなれているが、大島が目の前に見え、左右は山の岬が出ていて、畑の真中の木の櫓から下の宿の温泉が噴き出して夜も昼も白い煙を濠々立てている。その煙とはるか海の彼方の三原山の噴火の煙とが同じ一直線の上に在るように、ここからは眺められます。