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ごくちゅうへのてがみ
獄中への手紙
宮本 百合子
05 一九三八年(昭和十三年)
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 229,387 字 · 453 页
但現実から、どのようにとり出して来ている局面が、その範囲でうそでなく書かれているかということにまでふれて行く読書力ということはおのずから別です。
上田さんは、兵火の間にも文学を手ばなさず、いつ死ぬかもしれないからこそ小説をかくという気分で「鮑慶郷」を書いている。その気組みは本気さで人を真面目にします。しかし、文学と生活との関係で考えたとき、その場でそのときその人しか書けぬものを書かず、題材的に描写的にごくありふれたものを、そして生活から或意味で遊離したものを、その必死のなかで書くということは、文学というものの理解の点で重大な疑念を生じさせます。小説にまとめるだけが第一の文学的価値でない。更につき進んで、どういう心理的経過によって、ルポルタージュをかくべき『新文学』によっていた人が、そういう、生でない、一寸そらした文学とのとり組みかたをしているかと考えると、複雑なものが在る。火野という人は一昨日軍の命によって、報道班のチャンピオンとして上海から放送しました。
二十二人の作家が来るべき漢口陥落記録のために出発する由です。内務省情報部や何かのあっせんだそうです。